我妻はかごの中の鳥


「――」

あ、ちょっとコレはヤバイ。


“下の者”が瑠璃に近づくことで、瑠璃の価値が下がってしまう。


手の届く存在だと、変な認識をしてしまうのだ。



「御名前を伺ってもよろしいでしょうか…?」



眼鏡をかけた、気の弱そうな柔男。

見たところ、俺と同い年くらいか。

瑠璃の美しさに魅せられて、普段しない声かけなんかに手を出した、というところか。


「………」


無表情で、話しかけてきた男を見やる瑠璃。

男を視界に入れるな、なんかイラつく。

そんなバカな事を思っていたら、瑠璃が迷ったように小さく口を開いた。


「…ぁ…」



「ちょっと君ー、この子俺らのなんで、気安く名前なんか聞かないでくれる?」



さっ、と。

新しく登場した男は、瑠璃の細枝のような手首を手に取った。


「っ、」


驚いたのか、固まってしまった。

おーいー…

無表情内で驚愕に染めた目で、新しい男を見つめた。


どこかチャラそうな、黒髪の男。

今時風な彼は、幼く見える瑠璃と同じくらいの年齢に見えたから――高校生か大学生くらいか。


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