我妻はかごの中の鳥
群衆の中に入り、瑠璃に近づく。
「…っ、」
即座に俺を見つけたらしい瑠璃は、瞳を“希望”に染めた。
無表情だけど、その変化が嬉しい。
笑いそうになるのを必死に隠した。
求められてることが幸せになっているのだ。
「…歌月」
名前を呼ばれる。
それだけで胸がくすぐられたように疼いた。
たまらなくなったらしい、瑠璃が手首を掴まれたまま俺に駆け寄ってきた。
驚く男たちと周りをものともせずに、一心不乱に俺の胸に飛び込んでくる。
「瑠璃」
「……ぁづき…」
消えそうな声で呟き、胸に顔をすりよせる。
親に再開した子供みたいで、なんだか癒された。
「……くっ、」
どうやら周りは圧倒されているらしい。
今まで無表情で直立不動に等しかった美少女が、いきなり男に抱きついて名前を呼んでいるのだから。
なんとも気分がいい。
瑠璃は俺のもの。
見せつけることができるから、もっと甘えろ。