我妻はかごの中の鳥


「遅くなってごめん。電車乗り過ごしちゃって」


「……」

怒ってるらしく、胸をベシッとたたかれた。だから痛くないって。


もう片方の手で叩こうとして、男に引っ張られてることに気づいたらしい。


まぬけな格好でいちゃついてたのか…。



「…俺の妻に何か用ですか?」



低めの声で男に問う。

妻、を強調させて。


「…あ、い…いいえ」


なぜか焦ったように、慌てて手を振りほどいた。

瑠璃の真っ白の腕は、赤くなっていた。


「…ちっ」


舌打ちをしてしまう。

俺の瑠璃を傷つけやがって。


睨みそうになるのを抑え、瑠璃の頭を抱え込むように撫でた。


白髪が手に心地よい。


幾分かあらぶる気持ちを抑えることに成功。



「…人の女に手ぇ出さないでください」



呟くように、だけど通る声で。


黒髪の男の顔は、羞恥に歪んだ。



女神に手を出したものは、完全に悪者扱いにされる。

覚えとけ、チャラ男が。



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