我妻はかごの中の鳥
「…はあ…」
とんだ重症だ。
複雑な気持ちのはずなのに、愛しさが増すなんて。
素直に打ち明けた彼女が可愛くて仕方ない。
俺がいるとわかってた状態でだが、進歩していく彼女が楽しみで仕方ない。
甘えて頼る彼女が、愛しくて仕方ない。
「るーり」
呆れられたと思ったらしく、ビクッと肩を震わせた。
それすらも無表情なのに、笑いそうになる。
「焦るな。大丈夫だから。
瑠璃が頑張ろうとしてるの、ちゃんとわかってる。
甘えていいよ、俺らはそれが嬉しいんだから」
「……ら?」
「伊織も、弥生も、瑠璃の友達も。みんながって事だ」
「……ら」
“ら”を嬉しそうに無表情で反芻する。
大丈夫、わかってる。
そんな言葉じゃ瑠璃を救えない。
大丈夫じゃないくらい、瑠璃は悩んでるのだ。
自分で作った己の殻の籠が邪魔で、うまく感情や言葉を出せないことに。
必死に自分を殺して、殺して、殺して。
ようやく出来たのは無表情の瑠璃。
聞けば、小さい頃はもう少し笑えていたらしい。
俺とであった中学生の時でさえ、もう少し喋っていた。
原因は単純明解、傷ついたから殻(籠)を厚くしたまでである。