我妻はかごの中の鳥


「…はあ…」


とんだ重症だ。


複雑な気持ちのはずなのに、愛しさが増すなんて。



素直に打ち明けた彼女が可愛くて仕方ない。


俺がいるとわかってた状態でだが、進歩していく彼女が楽しみで仕方ない。


甘えて頼る彼女が、愛しくて仕方ない。



「るーり」

呆れられたと思ったらしく、ビクッと肩を震わせた。

それすらも無表情なのに、笑いそうになる。



「焦るな。大丈夫だから。

瑠璃が頑張ろうとしてるの、ちゃんとわかってる。

甘えていいよ、俺らはそれが嬉しいんだから」


「……ら?」

「伊織も、弥生も、瑠璃の友達も。みんながって事だ」

「……ら」


“ら”を嬉しそうに無表情で反芻する。



大丈夫、わかってる。



そんな言葉じゃ瑠璃を救えない。

大丈夫じゃないくらい、瑠璃は悩んでるのだ。



自分で作った己の殻の籠が邪魔で、うまく感情や言葉を出せないことに。



必死に自分を殺して、殺して、殺して。

ようやく出来たのは無表情の瑠璃。

聞けば、小さい頃はもう少し笑えていたらしい。

俺とであった中学生の時でさえ、もう少し喋っていた。

原因は単純明解、傷ついたから殻(籠)を厚くしたまでである。


< 139 / 140 >

この作品をシェア

pagetop