我妻はかごの中の鳥
さきほど、俺は食事に誘われた。
残業で疲れたと社交辞令のつもりで吐いたら、じゃあ一緒に食事でも、と。
それはいいです。ごめんなさいお断りしますと言って、さっさと身支度をしていたら、さっきの言動に至るわけだ。
断っただけじゃないか。
それをこんなにぎゃあぎゃあ…
つい訝しげに眺めてしまい、飯塚はビクッと肩をあげる。
そして今度は打って変わって、睫毛を伏せて。
「…行こうよ…」
しゅん、と眉毛を垂らす。
まるで子犬のように、儚げに。
作戦をかえたのは一目でわかった。
押してだめなら引いてみろ。
こうすれば大抵の男は落ちる。
いわゆるギャップ萌か同情で。
「別に今日じゃなくってもいいの。…今度、また日を改めて……約束だけでも…ね?」
上目使いで、落とす気まんまんなのだろう。
だが。
「お断りします」
ズバズバと彼女を切り裂く言葉をお見舞い。
「えっ」
さすがの彼女も目を見開いた。