我妻はかごの中の鳥
◇◇◇
翌日。
朝早く伊織は来てくれた。
「…ねむー…い」
「大丈夫か?ごめんな頼んで」
「いや、瑠璃のためだし…」
どうやら、地域新聞の小さいコーナーを任されたらしく、その仕事で徹夜してきたらしい。
大丈夫か、本当に。
こんこんと眠る瑠璃は彼に任せて出勤する。
「いってらっしゃーい」
「薬飲ませろよ。料理できないお前にかわって雑炊作ったから、冷蔵庫から取り出して温めて食べさせろ」
「…何回も言わなくていーじゃん…俺だってガキじゃねーし」
拗ねたような顔は、やっぱりじゃっかん瑠璃に似てる。
…まあ、父違いの兄弟なんだけど。
瑠璃と伊織は一緒に育っていない。
瑠璃が中学一年生のときに初めて存在を知ったほど、彼らの歴史は最近なのだ。
反対に、伊織はずっと瑠璃を知っていた。
どこかに父違いの妹がいると。
彼は見たことがない妹に期待を寄せ、ただそれだけで生きていた。
本当に、ただそれだけで。
だから、彼のシスコンは筋金入りだ。
その反面、伊織は自分の…瑠璃の母親を恨んでいる。
自分を捨てた存在だから、当然といえば当然だが。