我妻はかごの中の鳥

◇◇◇


携帯の番号を貰った俺は、社内を出てから飯塚にかける。


「飯塚さん?」

『ひ、なたくんっ?』


知らない番号だから出てくれるか不安だったんだけど、出てくれた。

『どうして…』

「わかったんです。あなたが今なにしてるか」


それだけで、彼女は息を飲んだ。

覚悟はしていたらしく、ため息をつく。


『さすが日向くん。頭がいい』

「…三好さんに電話番号もらったんです。俺の妻はそこにいるんでしょう?」

『いいえ』


――いいえ?

的が外れた?
いや、そんなことは…


『本当。今はいない。さっき、泣きながら飛び出していったの』


ふふふ、と歌うように告げられる。

…泣きながら?


「ふ、ざけんなっ!」

思わずだした大声に、視線が集まるのがわかった。

「お前…瑠璃になにをっ」

『付き合ってるって嘘言ったら本当に騙されてくれたの。単純な奥さまね?』


瑠璃は、昔からどこか単純な所がある。

無表情なくせにすぐに怒ったり、反対に笑ったり。


必死に奥底に眠らせてるのにわかってしまうような――まあ、そこが魅力なんだけど。


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