我妻はかごの中の鳥
瑠璃の魅力を利用するのは許せない。
彼女は薔薇のような美しさがある女だ。
だけど、その棘は他人ではなく、いつも己に向けている。
真っ先に自分を殺す子なんだ。
そのうえで成り立っている魅力を利用するなんて。
…お前いっぺん彼女に、瑠璃になってみろ。
絶対に三分も持たずに潰れる。
『なあんにも喋んないからどんどん言葉が並べられたの。やり過ぎちゃったかな』
「…今どこですか」
『会社近くの喫茶店。そこに彼女来てくれたんだけど、どこかに行っちゃった』
必死に俺を求めたあの時の声とは大違いだ。
余裕たっぷり――否。
どこか、自嘲気味だ。
もうなんでもいいのだろう。
俺が欲しいとか、そんな単純な感情じゃないのだ。
好意は憎悪に変わりやすい。
とくにその対象は、好意のある人が愛した人。
純粋すぎて簡単に手折れられる薔薇に、場違いもいい刃を向けたのだ。