我妻はかごの中の鳥
とにかく、喫茶店か。
駅前に向かわねば。
通話を切って、急ぎ足で向かった。
駅前に人だかりができている。
わいわいと、何やら騒がしい。
その中に瑠璃は…いるわけないか。
アンティーク調の喫茶店のドアを開けると、中に飯塚がいた。
「…飯塚さんっ」
放心気味に座っている。
一応先輩ではあるので警護を使わなくちゃならない。
…まあ、さっき怒鳴ったけど。
「…別に、貴方を手に入れたかったとかじゃない。ただあの子が憎くて」
ふ、と死んだ目で笑う。
全然きれいじゃなかった。
「駕籠に閉じ込められて育ったお嬢様。声を聞いた時そう思って、真底憎くなった」
違う。
あいつは、お嬢様なんかじゃない。
俺が閉じ込めたんだ。
あんまりにも外は危険すぎて。
彼女を傷つけすぎるから。
外にいるとき、彼女はあり得ないくらいの傷を負った。
真のお嬢様にはあり得ない傷を。
『化け物』と。
――そう、言われつづけながら。
外は彼女を平気で傷つけた。