我妻はかごの中の鳥
結婚はした。
だが、事情により姓が変えられないのだ、両方とも。
だから日向、白龍と両方の姓を名乗っている。
というか彼女、戸籍ちゃんとしたのないし。
まあその諸々の事情は置いといて。
「瑠璃」
リビングの彼女は何やらパタパタと忙しなく動いている。
俺が遅くなったせいで、冷めてしまった夕飯を暖めているのだ。
瑠璃は基本的に俺を待ってからご飯を食べる。
イイコちゃんなのだ。
だから彼女も空腹なわけで。
「……ぅ」
小さく声を出したと思ったら、お腹を抑えていた。
あ、鳴ったんだな。
聞こえなかったのに顔を無表情で赤くしている。器用だ。
「…ごめん、残業だったんだ」
くる、と顔を鍋から俺に向ける。
「……」
無表情で俺を見つめてくる瑠璃。
「寂しかった?」
「…、……」
くるくると首を左右に振る。
違うと言いたいらしいけど、一瞬顔を強ばらせたお陰で嘘とすぐにわかる。