我妻はかごの中の鳥

全くの口から出任せを口にし、周りを安心させる。


瑠璃を担ぎ上げ、お姫様だっこの形に。


周りが見えてないらしく、気絶に近い状態だ。


真っ赤ではなく、真っ青の顔。

まさか、肺炎を起こしかけているのか。


「本当にすみませんっ」


半ば逃げるようにその場をあとにした。


あの人だかりの野次馬がポカンとした視線を向けているのがわかったが、無視。


向かう場所もないのでとりあえず会社へ向かった。




「ひ、日向さんが…」「え?誰あれ?社内の人じゃないよね?」「お姫様だっこ…生で初めてみた」とかの噂話が耳につく。

まあ、瑠璃に比べたらどうでもいい。

ロビーの視線を介して、奥の方にある仮眠室へ寝かせる。

医務室もあるけど、絶対救急車呼ばれるし。



薄暗く誰もいない仮眠室にそうっと寝かせる。


軽く頭を撫でると、ゆっくりと瑠璃が目を開いた。



「…か、…づき?」



消え入りそうな声に胸が締め付けられた。
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