我妻はかごの中の鳥



自分の指にはないモノを悲しむように、薬指を撫でる。

瑠璃は、指輪を望まなかった。

と、いうより、瑠璃のサイズがなかった。


特注は高くなるからいらない。

それよりも、新居に必要な家電とかがほしい。


そう言った瑠璃を尊重し、今まで指輪はやったことがなかった。



「…あの指輪…も?」



おそるおそる、俺を覗き込むように聞いてきた。


「ああ、もちろん。飯塚とは、一回残業のときにコクられて――ただそれだけだから」


なぞっていた手を取り、口許に持っていきキスをする。

「っ、」

抵抗はしないけど、恥ずかしそうにかぶりを降る。


わざわざ偽者を用意するとは暇もいいところだな、飯塚。


「……欲しいの?」


「…」

ぼんやりと俺を見つめる。

返答に迷ってるのかもしれない。


ああ、でも。

この細くて長く、触れたら消えてしまう淡雪のような指に、冷たく美しいシルバーの指輪は似合うかもしれない。

自分の指と同じ場所にあるというだけで、どうしようもなく嬉しくなるのかもしれない。


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