我妻はかごの中の鳥
顔をくしゃりとしかめる。
俺の心臓を道連れにするが如く。
――瑠璃が、感情的になってる。
なんて珍しいんだ。
じゃなくて、どうしたっていうんだ。
慌てている間にも、瑠璃の目から雫が落ちた。
ヴィーナスの涙よりも美しいそれに、俺はひどく動揺する。
な、なんだ…
何をしたっていうんだ。
「…飯塚さんが好きじゃないってわかっても、うれしくないよ…」
うぅ、と愛らしく嗚咽を漏らす瑠璃に、たまらず頭を撫でてしまった。不謹慎だ。
「…あのね。気づいちゃったの」
まっすぐに、俺を見つめて。
「駕籠に入ってれば、危険分子の私を世界に出さなくて済むでしょう?」
きゅ、と。
いつのまに手元から離れた掌が、俺のスーツを掴んだ。
まるで、置いてくなとでも言うように。
否、言い逃れはさせないとでも――