我妻はかごの中の鳥


瑠璃にはトラウマがある。



小さい頃、大事な人を守りたい一心で、人を傷つけた。



死にたくなるような辛さの中。

彼女は自分を殺すことを選んだ――



それについてを語るは、決して今じゃない。


今すべきは、愛しい我妻を諭すこと。



小さいくせに意地っ張り、単純でおバカさんの彼女を救わねば。



「瑠璃」

ぴくんと反応する。

小動物のようないじらしさに、ついにやけてしまいそうになった。


「ひねくれんな。俺はお前の全部をひっくるめて愛してんだから」


きゅ、と。


シャツを握る彼女の手を握る。


「瑠璃がお転婆さんでおバカさんだから、駕籠に閉じ込めるんだ」


「…わ、私……一応成績はいいよ?」


「そーじゃなくってさあ」


苦笑しながら、頭を撫でる。


それが怖かったらしく、泣きそうな顔になって。



「…私、バカだから、呆れた?」



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