我妻はかごの中の鳥
「…」
ゆでダコみたいになってもなお無表情な瑠璃。
すごいな、なにこの無表情主義。
無表情の中に見える密かな感情を見つけるのが楽しい。
「さて、ご飯にしよっか」
「、……!」
こくこくと頷く。
これ以上真っ赤にされては敵わないと思ったのであろう。
「じゃ、着替えてくるから」
バイバイと無表情で手をふる。
恥ずかしさを隠したいんだな。必死すぎる。
リビングの隣にある寝室へ、着替えにいこうと背をむけた。
「歌月、」
燐とした、花がこぼしたような声が響く。
今さら、なんの用があって声を出したんだ…?
「な、に…どうしたの」
驚きを隠せず、ついどもってしまう。
「…残業、お疲れさま」
無表情。
なのにどこか柔らかく、笑ってるように見えた。