我妻はかごの中の鳥
好意に甘えて今日も定時に帰れた。
飯塚とは、あれから一言も話していない。
これ以上なにもしてこなければいいな…ぐらいに思ってる。
早く会いたくて、帰路に要する時間は朝よりぐんと少なくなる。
アパートのチャイムを押せば、また彼女がこっそり顔を出す。
家にいるという存在が。
ひどく俺を幸せにするのはなぜだろう。
「瑠璃、ただいま」
「……」
また、無言。
彼女の無口主義はどうしようもない。
とりあえず歩いて、瑠璃の背を追う。
白髪が光を弾いて、目に残像を残して去っていく。
あんまり綺麗だったから、思わず一房手にして唇に持っていく。
「…っ、…」
「ん?どうした?」
くるんと振り返って、無表情で手から髪を奪い、ドタドタとリビングに消えてしまった。
追いかけてリビングに入ると、瑠璃がソファに顔を埋めてる。
白髪から出た耳が真っ赤に染まってて、恥ずかしかったらしい。
――不意打ちに弱いのか。
またひとつ知った瑠璃が可愛くて、思わずにやける。
瑠璃に見られたら恥だと、机に目をやった