我妻はかごの中の鳥

半分しかキャラメルの欠片を啣えてないから、キスする形にすれば取ることが可能だ。

羞恥心に勝てば、な。


「…ぁ」


迷ってる。

無表情で、迷ってる。


迷わせてるのが楽しくて、笑いたくなるが、我慢。



「…目」

「ん?」

「……目ぇ閉じて」


消えそうな声で言う。

普段しゃべらないため、声を出すのが苦手なのだ。


そんな彼女の声を否定するのは辛いが、


「ごめん、やだ」


見てみたいものがあるんだ。

距離をはかるため、目を開けなくてはならない羞恥。

見つめてくる視線にどきどきしながら差し出す唇――


そんな彼女を見てみたい。


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