我妻はかごの中の鳥


「あっ…と、歌月さまお仕事では」


『ただいま』


「お、おかえりなさ…い?」


クールにただいま言うなよただいま!

思わずおかえり言っちゃったじゃねーかっ!


焦りから関係ないことを考えてる俺の受話器からは、『……おかえり』と本当に小さな瑠璃の声が聞こえた。


『瑠璃、ちょっと待ってろな。…おい伊織、お前なに瑠璃で遊んでんだよ』


極寒の美声に、背筋がぞわわと粟立つ。

瑠璃に向ける優しさと180度ちがくて、そのギャップがまた怖い。

受話器が凍りはじめた気がする。

「あ…の、遊んでたと言うか、萌えてたと言うか」

『あ?』

「……ずびまぜん」


飄々としている俺も、この人を怒らせるのは苦手である。

俺様としたことが、素直に謝ってしまった。


『…瑠璃、いいか?
お前のお兄ちゃんは変態なんだから、安易に言うこと聞いちゃダメだかんな』

「違う!瑠璃に関してちょっと青年的心の好奇心が多いだけで!」

『…考えてることは中高生と変わんない阿呆なんだから。わかった?瑠璃』

声音は優しいのに内容優しくない!?
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