月の恩返し
「月?月って、あの夜空に浮かぶ月?」
「はい」
おれは混乱しながら、その球体をよく見てみた。確かに、表面にクレーターらしきデコボコがあり、その姿は、宇宙図鑑の写真なんかで見る月の形とそっくりだった。
「いや、でも、月が、こんなところにいるって、ええ?」
混乱がおさまらない。
「実は、あなたに大事なお話がありまして、体を小さくしてここへ来た次第です」
ますます混乱して頭をかかえていると、月と名乗る球体は、
「失礼します」
と言って、ふわふわと飛びながら、仕事場にはいってきた。
「あ、こら、勝手に入るな」
あわてて追いかけた。