多分、君は僕のことが嫌い。


ギャルや挨拶をしてくる女子たちから逃げるようにして自分の席へ向かう。


席に着き、イヤホンを耳に突っ込んで、分厚い本を鞄から取り出し読み始めた。


きっと、今、僕からは話しかけるなオーラがでまくっていることだろう。


長年の経験からして話しかけられなくするには、この方法が一番手っ取り早くて、楽だ。


先生が来てHRが始まるまでの逃げ道を
確保し、本に集中する。


今、読んでいるのは“本屋の店員が選ぶ人気小説ベスト10”というやつの中の4位の本だ。


なんで、4位なんて微妙なところをチョイスしたのかというと、1位〜3位までが全てノンフィクションのものだった
からだ。


僕は、基本的にノンフィクションのものは読まない。


ファンタジーや完全なフィクションのものばかりだ。


今回の小説は、ファンタジーで、
魔法を使ってモンスターを倒していく、といった内容でよくあるような話だ。


主人公の男の子や、冒険の途中で仲間になった女の子、そして一緒に戦っていくモンスター。


お互いに支え合って先へ進んでゆく。


手強い敵と戦う時にはお互いに声を掛け合い、励まし合う。


辛い時は一緒になって悩んで、涙する。


嬉しい時は一緒に涙を流しながら声をあげて笑いあう。


そんな純粋な少年たちの心情を美しく表現してある。


その主人公たちの心情に共感したり、憧れたりする人たちが多く人気が伸びているらしい。


"こんなもんに共感できんの?"


まだ最後まで読んだわけではないが、
僕は全く共感なんてできなかった。


"だって、作り物だし。"


ファンタジーは作り物だからこそ、
美しい。


作り物は美しい。


だって、作り物だから。


完璧に計算されているのだから。



作り物に共感できる人がいるとすれば、
その人が現実離れした考えを持って
いるのか、作者が作り物の中に現実が入りこませてしまったのか、のどちらかだ。



まぁ、大概は後者の方なんだろうけど。


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