多分、君は僕のことが嫌い。



***


遠足当日。


遠足はジャージで現地まで行くため、
学校に着いたらすぐに着替えなければ
ならない。


だから、遠足の日は毎回朝から更衣室が
満員なのだ。


男だらけの更衣室で着替えるなんて
まっぴらごめんなので、今日は早めに
家を出なければならなかった。


…なのに!


こんな日に限って寝坊してしまった…!


"まずいまずい…!急がないと…!"


寝ぼけていた頭も起床予定時刻を大幅に
過ぎた時刻を表示している時計を見て、
覚醒した。


急いでTシャツとスエットを脱ぎ、
制服に袖を通す。


洗顔とハミガキを済ませ、スリッパを
革靴に履き替え、急いで家を出る。


1番近くのコンビニに入り、昆布・鮭・
明太子のおにぎりと缶コーヒーのブラックを買った。


コンビニの袋をぶら下げて、学校へと続く道を全力で走る。


袋の中のコーヒーがちゃぷちゃぷと揺れるのにも構わず、夢中で走っていた。


だから、気づかなかった。


目の前の細い路地から飛び出てきた
女の子に。


突然のことでスピードを緩める余裕も
なかった。


「危ない!」


そう叫んだけれど、あっちも僕に気づいてなかったみたいで、手遅れだった。


僕の声に反応した女の子がこちらを
振り向くと同時に全速力で衝突して
しまった。


勢いのままに衝突してしまったから、
女の子を押し倒すような形で倒れこんだ。


「「っ…。」」


そう、倒れこんだのだ。


そこまではいい。


いや、よくないんだけど。


いいことにしよう。


そんなことよりも…。



"倒れこんだ勢いで唇どうしが触れ
合ってしまった…。"



事の方が今は問題だろう。


そう触れ合ってしまった。


いわゆるキスをしてしまったのだ。


"ど…どうしよう。
いや、どうしようもないんだけど、
謝るしかないんだけど…。"


「ごめん…。大丈夫?」


とりあえず女の子から退いて、冷静を
装い、声をかける。


もちろん頭の中は混乱していた。


「いたた…。
こっちこそごめんなさい。
前方不注意だったので…。」


起き上がりそう口にした女の子。


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