甘い時 〜囚われた心〜
桜華の腕に絡む祐希奈を見て悲しくなる。

数ヶ月前までは自分がいた場所だった。

「雛子…」

そんな雛子を誰かが読んだ。

振り返ると、薄い水色のドレスに身を包んだ鈴音がいた。

「鈴音…」

「綺麗よ…雛子…」


雛子の気持ちを知っているから、おめでとうとは言えない。

そんな雛子達を会場中が見ていた。

日本随一の名家の娘
【雛子】【祐希奈】

実質日本一の会社の御曹司
【桜華】

日本一強大な病院の娘
【鈴音】

それが自然と集まっているのだ。

喉から手が出るほどにその中に入りたい者は山ほどいた。


雛子は鈴音に静かに抱きつく。

「来てくれて…ありがとう…」

「うん…」

自然と手を握り合う2人。

「元気だった?…少し痩せたみたい…」

「そうかな…」

ふふっと笑いかける。

「最近忙しかったから…」

「そう…ちゃんとご飯食べなきゃダメだよ」

「うん…」


2人の会話に割って入ったのは西條だった。

「雛子ちゃん。あちらにも挨拶に行こう」

「あっはい……鈴音、また後で…」

「うん…」

助けを求めるように握られた手が離された。
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