甘い時 〜囚われた心〜
「あれ、誰?」

「知らない」

「西條商事なんて聞いたことないわ」

「最近、業績を伸ばしてきた会社らしい」

「知ってんじゃない」

「さっき、他の招待客に聞いた」

「ふーん」

雛子の姿を目で追いながら話をする。

2人の会話に入ろうと、祐希奈が無理矢理話に入ってきた。

「西條さんはパパが雛子ちゃんの為に探してきた人なんです!きっと幸せになれますよ」

ニコニコ笑う祐希奈に苛立ちが募る。

「幸せになれると、なぜ分かる?」

桜華の問いかけに、ビクリと体が震えた。

祐希奈にも分かるほど苛立っていたのだ。

雛子を見ると、西條の手が、自分の所有を固持するように雛子の肩や、腰に回されている。

言い様のない嫉妬が、桜華の身体中を蝕んでいた。
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