甘い時 〜囚われた心〜
「雛子…顔色が悪すぎるよ…」

一緒に会場を後にした鈴音が心配そうに顔を覗き込んだ。

桜華に抱き上げられたままの雛子は、辛そうに微笑んでみせた。

「大丈夫だよ…」

「桜華。うちの病院で見てもらお?どこか悪かったら…」

鈴音の心配そうな顔に桜華も頷いた。

「雛子…鈴音の病院で見てもらおう?」

「私、大丈夫だよ…?」

「念のため…な?」

桜華の言葉に、渋々頷いた。

「桜華様!」

尚人が走ってくる。

「雛子さん…」

雛子を見て目を丸くしたが、すぐに優しく笑いかけてきた。

「お帰りなさい」

「ただいま…」

雛子も笑う。

「桜華様、例の件ですが…最後の一人から連絡が来ました。すぐに会いたいと…」

「…分かった。雛子?ちょっと急用ができた。鈴音と先に行っててくれ。必ず行くから…」

鈴音の車に雛子を乗せた。

「鈴音。後を頼む。用が済み次第、行くから」

「分かったわ」

鈴音に頼んだ後、車を覗き込む。

「必ず迎えに行くからな」

軽くキスをした。
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