甘い時 〜囚われた心〜
雛子の検査結果が出るのに、そう時間はかからなかった。

診察室に座ったままの雛子達のもとに、智則がやってきた。

「雛子さん?最近、食欲は?」

「え?…あっ…食べようとすると気持ち悪くなって…」

「胸が張ったり、足がムクんだりしてるかな?」

「…はい……」


智則の質問に雛子は不安が募りだす。

「お父さん!?まさか!?」

鈴音の声に、智則が頷いた。

「あの…」

不安そうに目を揺らす雛子の目をじっと見つめ検査結果を伝えた。

それは雛子にとって予想を遥かに越えた結果だった。




「雛子さん?あなたのお腹に新しい命が宿っています」

突然の結果に、雛子は何も言えずにいた。

「父親が誰なのか分かっているのかな?」

戸惑いを隠せない雛子に優しく問いかける。

「…は…はい…」

「そう。君は今、妊娠三ヶ月目に入っている。君の年齢や体、赤ちゃんの状態から言っても、もし産めないという気持ちがなるなら、早めに処置をするべきだ…」

智則の言葉は正しかった。

しかし、雛子は話についていけずにいた。
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