甘い時 〜囚われた心〜
その言葉に智則が少し苛立ちながら言った。

「簡単に、一人で育てるなんて言うんじゃない！それがどれだけ大変か分かっているのか！」

医者という立場から言えば、当たり前な怒りだ。

雛子はビクリと体を震わせる。

しかし、ジッと力強い瞳で智則を見つめた。

「軽い気持ちじゃありません…桜華が愛してくれて出来た子だから育てたいんです…でも私との事で桜華が辛い立場になるかもしれない…今は負担になることは避けたいんです…」

「その間にも子供は育っていくんだぞ？」

「はい…近い内に必ず言います…でも、今は！お願いします！」

雛子の目が潤み始めた時、智則が軽く息をはいた。

「パパ…雛子を信じてあげて？雛子は命を粗末に扱う子じゃないわ！」

「鈴音…」

「分かった。頑張りなさい…」

「はい…」

雛子の瞳から涙がこぼれた。
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表紙・目次

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