甘い時 〜囚われた心〜
車を飛び出すと、足早に廊下を進む。

電話で聞いていた院長室に向かう。

静かな廊下に足音だけが響いていた。



院長室…


ドアの上にあるプレートを確認してノックした。


カチャリ…


ドアを開けると立派なソファーに雛子・鈴音・智則がいた。

「雛子!」

桜華の姿を見て、無意識に駆け寄っていた。

「検査は!?」

智則と鈴音が顔を見合わせた。

「桜華君、問題ないよ。ただの貧血だ。かなり疲れていたようだね」

智則の言葉に心の中で感謝しながら、雛子は桜華に笑いかけた。

「本当だよ?大丈夫だった」

桜華は雛子を抱き寄せる。

「心配した…」

「ごめんなさい…」

顔を見合せ笑う。

「まだ体調が万全とはいわないからね?なるべく安静にさせておきなさい」

智則はそう言うと微笑んだ。

桜華は智則に深く頭を下げる。

「おじさん…ありがとう…」

「ははは…桜華君に頭を下げられるとは驚いた!」

「でしょ?雛子の事になると今までにないとこ見せてくれるんだから!」

鈴音の可愛い笑い声が響いていた。
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