無垢な瞳
「父さんが全部悪いんだ」

「父さんがどうして悪いの?」

「父さんは逃げてばかりだからな。卑怯者だよ」



父の語気は荒かった。

僕は父を責める言葉を用意してはいなかったが、こうして女からの電話の内容を伝えること自体が父にとっては責められているのと同じなのだろう。



「そんなこと言わないで! 僕は父さんが大好きだよ」



嫌な予感がしていた。

父がこのままいなくなってしまうのではないか、自分はとんでもないことを伝えてしまっ
たのではないか。

僕は後悔の気持ちで頭の中がぐるぐると渦巻いていた。
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