無垢な瞳
一番が終わり間奏が入る。

気持ちがいい。

この感覚。

僕は恍惚にも似た感覚が体を貫くのを感じた。


二番に入る。

僕は体がまるで宙に浮かんでいるような気分になっていた。

全てが解き放たれ、自分自身が宇宙と同化しているかのように。




母さん、客席で聞いてくれているかな。

僕たちすごいだろ?

こんな僕を母さんが少しでも誇りに思ってくれたら嬉しいよ。

僕たちの演奏を聞いて、母さんに言ってほしいんだ。

「すばらしかったわ」

その一言だけでいいんだ。

そう言って笑ってほしいんだ。

母さん、聞こえるかい?
< 143 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop