無垢な瞳
僕はアキに目で合図した。

アキはうなずき、会場の方を向いて言った。

「みなさんも一緒にどうぞ。ラララで!」

最後は会場も一緒に大合唱になった。

みんながそれぞれ泣きながら笑いながら、歌った。




そして演奏は終わった。

会場は静寂に包まれたが、誰一人として拍手をしてはいけないルールを思い出し、誰もが複雑な気持ちでいた。

アキは笑っていた。

会場に向かって一礼をすると、コウの手をとって舞台中央に立った。

僕がコウの耳元で「礼」と言うとコウはぎこちなかったが、客席に向かってがちがちに頭を下げた。



するとどこからともなく「ありがとう」という声が聞こえた。

「ありがとう」という声は、次から次へとふくらみ、会場いっぱいにこだました。



僕はコウがパニックを起こすのではないかとはらはらしていたが、コウは満面の笑みをたたえていた。

そして両手を口元に置き、

「ありがとう!」

と会場に向かって叫んだ。



体育館は大人も子どもも「ありがとう」と連呼していた。

コウに続けとばかりに、6の1のクラスのみんなも叫んでいた。

「ありがとう!」

誰の目にも光り輝くものがあった。
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