無垢な瞳
そう思ってかけたのだが、父の携帯番号は使われていないものになっていた。

「あの人、あんな状態でしょ。携帯ももてないのよ」

事情を知らない母は笑い捨てた。

こちらからは父に連絡をとれない。

いまどきそんなことってあるものなの?

アキはいらだっていた。

とにかくアキは今日自宅でケンの電話を待ち続けるしかなかった。

お願い、早くかけてきて。

時計を見ると、二時を過ぎていた。



トゥルルルル‥‥・。

ケン?

急いで受話器をとった。

「ハイ、長谷川です」

「やだ、アキ、まだ家にいたの?早く出ないと待ち合わせの時間に間に合わないわよ」

母の幸だった。
< 193 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop