無垢な瞳

第一章

１

暖かな春の日差しが差し込む音楽室。

もう五時間目が始まった時間だ。

さっきまで子どもたちの声がこだましていたのがまるで嘘のように、しんと静まり返っている。



僕はグランドピアノの前に腰を下ろし、ピアノのふたに手をかけた。



前に使った先生が鍵をかけ忘れたのだろうか。

今日はついてる。



僕は鍵盤の上に敷かれた赤い布を乱暴に引っ張って、床に放り投げた。

気がつくと、僕は乱暴に鍵盤を叩き始めていた。
　　


シューベルト「軍隊行進曲」。
　


序章はファンファーレ。

続いて軽快な行進曲が続く。

テンポよく弾む鍵盤に僕の心が躍る。