無垢な瞳
「感じ悪い‥‥」

アキがぼそっとつぶやいた。

「何言ってるのよ。私がお金出してあげなかったら、あんたここまで来ることなんかできなかったんだからね。言ってみれば私は恋のキューピッド」

幸は右手をハンドルから離し、投げキッスをしてみせた。

「‥‥」

悔しいけれど、そのとおり。

アキは幸の好きなように言わせるしかない。

七戸に入ってすぐ、国道沿いに公衆電話を見つけた。

幸はすぐに路肩に車を停めた。

アキは幸にうながされて、車から降り、電話ボックスの中のタウンページをめくった。

「公衆電話なんて東京じゃまず見当たらなくなっちゃったけど、よかったじゃない。こっちにはまだちゃんとあるのね」



「袴田孝之  ××-○○○○」



「母さん、あったわ。たぶんここだと思う」

アキはメモにケンの祖父と思われる人の住所を記した。
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