無垢な瞳
「この子ね、渡瀬コウくん。先月転校してきてタンポポ学級に入ったの。６年生だからケンくんと一緒だわ！仲良くしてあげてね」

沢村の髪の毛は栗色で、太陽に透けるといっそう茶色く見えた。

いまどき、教員の茶髪なんて珍しくもなんともないのだが、タンポポ学級の担当としては不適切ではないかと、僕はがらにもなく年寄りじみた考えでいた。


「別に」

僕はわざとそっけない態度をとる。

「そうそう、さっき歯科検診で、タンポポ学級の子達を廊下に並ばせていたの。そしたら、コウくんがいきなり走り出して‥‥」

沢村は大げさに身振り手振りを交える。

「いつもはそんなことする子じゃないのよ。でもすごく音楽に興味があるから、もしかしてケンくんのピアノに反応して走り出したのかなって思ったのよ」

沢村の言い方が言い訳じみて聞こえる。
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