無垢な瞳
コウのピアノが聞こえる。



私はコウの障害を知ったとき、夫に失踪されたとき、両親に拒絶されたとき、そのたびに自分が重い十字架を背負っているのだと、思い知らされた。



私に架せられた宿命……?

そんな簡単な言葉で片付くようなことじゃない。



でも、あの頃、私の背中にはりついたあの十字架から逃れたくて私は必死にもがいていた。



もがいてもがいて……もがき苦しんで……。


私はコウの命を絶とうとした。



そのとき、あの光が見えた。



コウの体が光のベールをまとっていた。

あれはなんだったのだろう。



ケンくんにも見えたと言っていたわ。



もしも神様がいるのだとしたら‥‥。

コウは神様が授けてくれた天使なのかもしれない。




コウに障害があるとわかったのは、八年前。

八年の時間の中で、私に架せられた重い十字架は私の中に同化されていった。



だから今は大丈夫。

何が起こっても私には受け入れられる自信がある。
< 65 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop