無垢な瞳
「ああ、苦情が少しずつ増えてきていて」

芝山は二人の顔色を見ながら話を続ける。

「年が明けたら受験が始まるからな。親御さんが神経質になるのも無理ないんだ。無理やり練習に行かされているって思っている親もいてね。もちろんそれについてはきっちり説明はしているんだが、堤防が決壊しそうないきおいなんだな、これが」

芝山は無理して冗談めかして言っているように見えた。



クラス発表は一時的なもの。

みんなこれから先の長い人生を見据えてやるべきことはいくらでもある。

そのクラス発表が人生の足かせになるようでは困る。




「仕方ないね」

アキが机に突っ伏した。

「ああ。大丈夫だよ。できる範囲でやればいいさ!」

相棒が落ち込んだときは、空元気でも自分が盛り上げないといけない。

アキが上目遣いで僕の顔を見てにやりと笑った。

「おお!ケンだって意外に強気じゃん!」

僕らは顔を見合わせて高らかに笑った。

二人とも口にはこそ出さなかったが、下手すれば後ろ向きになりかねないこの気持ちをなんとかして奮い立たせようと必死だった。
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