無垢な瞳
「ケン、最近忙しそうね」

夕飯を食べながら、母が言った。

「まあね、いろいろと」

僕は最近母さんの目を見ることが少なくなっていた。

別に母さんが嫌いとかそういうわけじゃない。

なんとなく気恥ずかしいというか、僕としてはずい分一人前の気持ちでいるが、母さんが僕を子ども扱いしているのがわかるので、居心地が悪い。

そんなわけで、僕は自分自身のことをまず話さない。

二人きりの食卓は小さな頃のような会話はなくなり、なんとなくテレビの音だけが場をつないでいた。

母さんが寂しそうな目で僕を見ているのがわかったので、僕も気を遣う。

「お替りもらってもいい?」

「もちろんよ、たくさん食べなさいね」

母さんの顔がぱっと明るくなったのを確認して僕もほっとする。

母さんはお替りをよそってきて、「これも食べなさい」と自分の分の唐揚げを僕の皿に乗せた。
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