無垢な瞳
「コウにわかりやすいシナリオね……」

コウの母は腕を組んで考えている。

「構造化することがいちばんいいだろうな」

彼女はぼそっと口に出した。

「構造化?」

二人で揃って聞き返してしまった。

「そう。構造化っていうのは、人目で見てわかりやすくするってことなんだけど……」

コウの母は、上の方に目をやって考えている。

二人にわかりやすい説明の仕方を探しているようだ。

「たとえば駅。たくさんの路線があってたくさんのホームがあって、切符を買ったり、人と待ち合わせたり、とにかくあそこは混沌としたところでしょ。でもそれがみんな秩序よく動ける。それは構造化のおかげなのよ」

二人は駅を思い浮かべる。

「例えばケンくんが上野駅から新宿駅まで行きたいとする。ケンくんは自販機で切符を買う。上に書いてある表示を見て新宿までのルートと運賃を確認しながら、切符を買う。自動改札を抜けて、山手線新宿方面の表示を確認しながら、そのホームにたどり着く」

「それがなんなんですか?」

「今、言った中に、たくさんの構造化されたものがあるの」

「え?」

「例えば、自販機の上の表示。一目で新宿までの路線と運賃がわかるようになっている。それに、駅の案内表示。これも山手線は緑色って色分けされてわかりやすく表示されている。みんな構造化よ」

「なるほど」

僕らは感嘆の声をあげた。
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