無垢な瞳
トゥルルルル、トゥルルルル‥‥。



「島野さんのお宅ですか」

一人で留守番中、中年の女から電話がかかってきた。



「あなた、島野さんのところの子どもさん?」

「はい」

女は感情を抑えようと低い声で話そうとはしているが、ヒステリックな様相は受話器を通しても伝わってきた。

「お母さんは?」

「出かけています」

「何時に帰ってくるの?」

母は病院に通っていた。

僕は把握しきってはいなかったが、定期的に家を空けるのはこのためだ。

「わかりません」




僕はこの女にいい印象を持てなかった。

だからわざとぶっきらぼうな言い方をした。



僕の声を聞いて女は意を決したようだった。
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