無垢な瞳
僕はその場からなんとか逃げたくて、よろけながらも歩き始めた。

どこをどうあるいたのか、視界に児童公園が入ってきた。

僕は公園のベンチにへたりこんだ。

頭の中が真っ白になっていた。

僕の中では、父は渋々元の奥さんの所に戻ったということになっていたが、これは根底から覆された。

少なくともさっきの状況では、僕は捨てられたと解釈すべきだろう。

携帯が鳴った。

父さんからだ。

「もしもし父さん?」

「ああ、ケン。悪かったな。ちょうど仕事中だったから、変なきり方をしてしまって」

「仕事中だったんだ」

「休日出勤だよ」

「たいへんだね」

「そんなことないさ。どうした電話してくるなんて何かあったのか?それに声が遠いような気がする」

「ううん、なんでもない。父さん元気でやってるかなって思って」

僕は涙声にならないように、必死で声を抑えていた。

「じゃあね」
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