無垢な瞳
父さん、僕はこんなにあなたの近くにいるのに‥‥。

どうして僕の気持ちをわかってくれないの?

元来た道をそのままたどれば駅に出る。

もうこの場所に来ることなんて二度とないだろう。



国道を渡る歩道橋を越えて、僕は最後にもう一度父さんの家の方を向いて、あいさつをしようと決めていた。

これで父さんのことは忘れられる。



さよなら、父さん。

さよなら‥‥。

‥‥。


僕の瞳は涙が溢れていて何がなんだかよく見えない。

しかしこれだけははっきり見える。

国道の向こうで手を振るその人は、僕の父さん以外の誰でもなかった。
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