約束


「何してんだよ。」

「えっ、その、えっと…」

誰もいないと思っていたあたしは、驚きのあまり、分かり易い嘘をついた。

「海で遊ぼっかなァって思って…」

自分でもなんて分かり易い嘘をついたのかと、後悔した。

「風邪、引くぞ。」

ただ、それだけ言って、自分のマフラーをあたしに巻いてくれた。




何も触れずにそれだけ言って、立ち去ろうとする彼に、

「あっ、あの…、その…、ありがとう、ございます!」

そう言うのが精一杯で、

そんなあたしに彼は、笑いながら、手を振った。


どうして、あの場所にいたのか、

なんで、あたしを助けたのか、

聞きたいことはたくさんあるのに、

何も聞けなかった。


だけど、そんなことは、どうでもよかった。

初めて会ったあの日から、

きっと、

あたしは、

彼に好意を抱いてたんだと思う。




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