約束



手紙を開くと、



叶へ

ずっと自分の口で言わなきゃって思ってたんだけど、この方が俺のありのままを伝えられる気がして手紙を書いてみました。

初めて叶を見た時から、どこか俺と似た何かを持っている気がしたんだ。

制服を着ているのに、どこか子供っぽくなくて、悲しそうな顔を必死で隠そうとしてて、苦しんでるってすぐ分かったよ。

叶には伝えてなかったけど、俺の母ちゃんシングルマザーなんだ。しかも、癌で入院してる。

母ちゃん、俺が見舞いに行くたびに、辛い体を起こして無理して笑ってた。
体は辛くないか?とか職場ではイジメられてないか?とかしっかり食べてるか?とかいつも心配ばっかりでさ。

そんな、母ちゃんが言ったんだ。
大切な人が出来たら、手放さない努力をしろって。母ちゃんは、努力しなかったから、オヤジが、逃げたって。

その時、親父が死ぬほど憎いと思った。
オヤジのようなヤツにはなりたくないと思ったんだ。

俺の大切な人は、叶だって直感で思ったんだ。そんなに親しくなったわけでもないのにバカだよな。
あの日、叶と話せて死ぬほど幸せだったよ。なのに東京に行くことになって、どうしても気持ちを伝えたくて、告白した。

でも、俺は自信がなくて、努力を忘れて自分ばかりに気を取られて、それでも叶は俺を想い続けてくれた。

叶、愛してるよ。これから叶のために努力して、きっと叶を幸せするから。その日まで一緒にいてほしい。どんな困難も一緒に乗り越えていきたい。叶は、俺の全てだよ。

最後に叶が寒くないようにマフラーを、叶があの海を近くに感じられるように大翔が書いた海の絵画を、初めて惹かれた日からこっそり撮ってる写真を、送ろうと思います。



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