無声な私。無表情の君。
最初は彼が話をリードしてくれた。
それに従って私もスラスラと文字を並べる。
意外と無表情の割にはよく喋る人だった。


会話も弾み、私と彼の仲も大分深まってきた(と思う)ので、私は思いきって、話の流れから勢いで聞いてみた。

【表情、堅いって言われません?】

受け取り方を変えれば良い話題にも、悪い話題にもなりうる。
いわば賭けのようなものだが、今日を境にもう会話をすることはないのだから、面白半分で聞いた。

「言われるよ」

まず、その無表情をどうにかしてくれないと、通じあうものも、通じあわない。今のはどう捉えたらいいんだ???

「じゃあさ、俺からも質問」

おっと。いきなり来たな。今日の主題のようなものだ。かかってこい!

「今日、俺の事を避けたでしょ。あれって何で???」

珍しく声色に?が3つ付くほど完璧なイントネーションだった。ビックリした。

と言うか、質問。どう答えれば。うん。わからない。

首をかしげる。わからないふりをする。

「覚えてないのか、手、差し伸べただろ。あんとき」

ヤバいぞ。突破口を塞がれた。
逃げ道がなくなった。

これだから人は嫌い。
特に、こんな人。なりふり構わずズカズカ人のプライバシーに触れてくる。
これこそ侵害。

「答えられない理由があるのか」

なにこれ。バスケで鍛えた睨みってやつですか。怖い。怖い。怖い。怖い。

手が震える。文字が書けない。つか、吉川君の目、こんなに黒かったっけ?漆黒過ぎるよ。

段々、呼吸も難しくなってきて息が乱れる。怖い。
さっきから凄い威圧感。人と関わるのは、もう御免だね。

「大丈夫か?おい!」

目の前がクラクラする。触られる。嫌だ!



< 11 / 150 >

この作品をシェア

pagetop