黄昏

校門を出たところで
また久遠と出会った。

「…」

声をかけようと思ったのに、
それが出来なかった。


いや、かけてはいけない気がした。


彼女はボーっと月を見つめ、
恋しそうな
哀しそうな
表情でいたから…


その姿に見とれていたら急に寒気がした。

それと同時に、
久遠が振り返る。

同じ方向を見ると、
風邪で休んでいるはずの山村さんがいた。

「山む…」

「声をかけるな!
オマエに見えているのは全くの別者だ。
ソレは山村じゃない!」

鋭い声で静止され、
彼女をみる。

久遠の長い髪が
強風で吹上られている。

< 8 / 19 >

この作品をシェア

pagetop