黄昏
校門を出たところで
また久遠と出会った。
「…」
声をかけようと思ったのに、
それが出来なかった。
いや、かけてはいけない気がした。
彼女はボーっと月を見つめ、
恋しそうな
哀しそうな
表情でいたから…
その姿に見とれていたら急に寒気がした。
それと同時に、
久遠が振り返る。
同じ方向を見ると、
風邪で休んでいるはずの山村さんがいた。
「山む…」
「声をかけるな!
オマエに見えているのは全くの別者だ。
ソレは山村じゃない!」
鋭い声で静止され、
彼女をみる。
久遠の長い髪が
強風で吹上られている。