冷血上司の恋愛論
思い出しただけでもイイ女。心までも欲しかった女。だが、こんな再会とは。


暫く藤井が挨拶にまわるのを眺めた後、気を取り直して仕事にかかった。


それなのに、榊部長から、


「『野の花』の改装は、藤井の勉強になる。藤城、藤井も連れて行くように。因みに専務直々の頼みだから、そこんとこ宜しく」


俺が断るのを見越しての言葉だ。


(いきなり課長と同伴なんて可哀想)
(課長に怒られて泣くだろうね、可哀想だけど)
(課長に付いていたら胃潰瘍になりそう。また、すぐに辞めてしまうよ)


周りの藤井に対する同情の言葉に小さく舌打ちをする。


「藤井、『野の花』はレトロな喫茶店だったが、代替わりで洋菓子店に変わる。これ資料だから見ておいて。午後イチで先方に訪問だから」


机上から資料を取り出して藤井に手渡すと、藤井は小さく返事をして資料を手に俺に背を向けた。


それを見届けた部長から会議室に呼ばれた。


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