冷血上司の恋愛論
藤井の当面の面倒を誰に頼もうかと考えて、俺は、内山にした。


内山は、藤井と同じインテリアコーディネーターで、恋愛に命を懸けている他の女子社員と少し違う。ふくよかな容姿が災いしているのかと思いきや、最近知ったのだが、アイドル顔負けの男がいるのだとか。


「内山、藤井」


俺は二人をデスクに呼び、当面のことを指示する。


それが終わってやっと日常の仕事に戻ると、藤井を連れだって出かける時間まであっという間だ。


少しは嬉しいと思ってくれるだろうか?
二人きりになるとあの夜の話をしてくるだろうか?
それとも既に忘れ去られているだろうか?


心の内を見透かされないように、出来るだけクールに話しかける。


「藤井、そろそろ先方に行く時間だ。車をとってくるから用意して正面で待っていてくれ」


「はい」


短い返事のあと、俺に目を向けた藤井。


あの日、窓ガラス越しに見た藤井の目と重なる。
数秒間だったと思うが、見つめあったままだ。


「課長?」


不思議そうな声にハッとして俺は慌ててエレベーターに駆け込んだ。
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