冷血上司の恋愛論
密室では紳士的にすること
俺が車を正面に回すと、誰かと電話している藤井がいた。


これから大事な打ち合わせだというのに呑気にプライベートな電話だと!?
上司の俺が車まで回しているというのに。


イライラして助手席の窓を開けて、大声で名前を叫んだ。


「すいません、雅司さん。課長に呼ばれたのでまた改めます」


電話しながら助手席のドアを開けて座った藤井は、俺にすいませんと頭を下げた。


「シートベルト閉めて」


本当は言いたいことが沢山ある。だが、今、ここではスルーしてアクセルを踏み込んだ。


電話の相手、雅司さんって専務だろ？とか、専務とどういう関係だとか、仕事以外のことまで口走ってしまいそうだったからだ。


「あの、課長。『野の花』へ行く前にお話ししたいことが」


信号待ちになると待っていたかのように藤井が声をかけてくる。


「何？」


冷たいにも程がある。俺は、藤井に目も向けず声を発した。



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