ぼくたちはあいをしらない

　孤児院の中に設置されている公園にて静かにペットボトルのお茶を飲む老人がいた。

「じいや、茂を連れてきたぞ」

　百寿がそう言ってその老人に話しかける。

「百寿か……
　久しいのぅ」

「ああ、久しぶりだな」

　百寿は、そう言って茂の頭を撫でる。

「で、そっちのが来島　茂くんかい？」

　老人は、優しい目で茂の方を見る。
　茂は、百寿の後ろに隠れ怯えながらその老人の方を見る。

「ああ、そうだ」

　百寿が、そう答えると老人は茂に近づき目線を合わせる。

「そんなに怯えなくていいぞ？」

　そして老人はニッコリと笑う。

「この人の名前は、」黄昏　六騎さんだ。
　みんなからじいやと呼ばれているから茂もこの人のことをじいやと呼んでやってくれ」

　百寿が、そう言うと茂の口が小さく動く。

「じいや？」

「なんじゃ？」

「うんん。
　なんでもない」

　じいやの優しい笑顔に茂は、警戒を少しだけ解いた。

「よし！
　これで、茂も俺らの家族だな！」

　達雄が嬉しそうに笑う。

「家族？」

　茂は、首を傾げる。

「一緒に飯を食う仲になるってことだよ」

　みゆきが、ニッコリと笑う。

「そう言えば、じいやの苗字が黄昏って言ってたけど、みゆきちゃんと同じだね？
　なんか関係あるの？」

　茂が、そう言うとみゆきが答える。

「じいやは、私のお父さんのお父さんだよー」

「おじいちゃんってこと？」

「うん！
　そうだよ！」

　みゆきが、嬉しそうに笑った。