ぼくたちはあいをしらない
「そっかー」

 茂は、小さくうなずいた。

「うん!」

「ところで百寿よ……
 主は、ヤツを招いたのか?」

 じいやが、そう言って斜め後ろを見る。
 茂たちもその方向を見る。
 するとそれを若い青年が立っていた。
 青年は、嬉しそうに笑う。

「ガキが5人に、男1人に爺が1人……
 そして、女が1人か……」

 その言葉に百寿が反応する。

「女……?」

 すると静かに若い女性が現れる。
 南だった。

「南……
 つけていたのか?」

「すみません。
 少し気になることがあったので……」

 南が謝る。

「いや、嬢ちゃんはいいんじゃ……
 歓迎しよう。
 じゃが、お主は歓迎できぬ」

 じいやが、そう言って青年の方を睨む。
 空気が一瞬で重くなる。

「ケケケケケケ。
 差別かよ?」

 青年が、そう言うと一瞬でじいやの背後に移動する。
 じいやは、それよりも素早い動きで青年を攻撃する。

「お前は、春村 轟(はるむら とどろき)だな?」

 百寿が、そう言ってその青年の頭に銃を当てる。

「そうだ……
 俺が、春村 轟だ」

 轟が、そう言うと今度は百寿の背後に一瞬で移動する。

「お前も能力者か?」

「ああ……
 スローモーションって言うんだ。
 お前らには一瞬で見えるだろうが、俺にはお前らがスローモーションに見える」

「いいのか?
 自分の能力についてそんなに話しても……」

 百寿が、その言葉を待っていたのかのように答える。

「ああ。
 お前らはここで死ぬのだからな!」

 轟が、そう言って麻友の背後に立った。
< 16 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop